雑感1・26

 ふとした時に故郷を想う。22年という決して長いとは言えないこの時間の中で、自分は19年間を東京で過ごし、残りの1年を松本で、1年半を長野市で、そして半年をベルギーのルーヴェンで過ごした。ふとした時に思い出すのは、家族や親戚、友達など周りにいた大切な人達と、北アルプスの山並みや、松本城下、善光寺周辺の門前町。人びとの心と信州の美しい自然。不思議なことに1番長い時間いた、あの雑多な新宿の高層ビル群や密度の高い東京の風景を思い出すことは非常に少ないように思う。近代化して個性を失った風景は、こちらでも見ることができ、どこも似通っていて個性がない。
 自分の中で、素朴で混じりけのない伝統的な日本文化や風景というものに対する興味が日々増していくのがわかる。思えば漠然としていたあこがれから、あることをきっかけに、実際に自分の身体でもって、目の前に広がる西洋の風景を見てみたいと思い留学を決意した。華やかなフランス。暗く荘重なドイツ。中世とモダンの融合するオランダ。歴史的な背景からフランス、オランダ、そして僅かにドイツの文化が混在するベルギー。これらの国に影響されながら、近年はアール・ヌーボーシュルレアリスムを生んだ国が現在はEUの本部を持ち、ミックスされた人種の中で、自分自信を見つめなおさせてくれている。
 この機会を与えてくれサポートしてくれた人たちに感謝しながら、残りの期間は出来るだけ日本的な物から離れたいと感じている。関心が高まっているからこそ、そのギャップを今後のためにさらに広げておきたい。多くに人が出来る単純に土木構造物や建築などを見るだけの小旅行ではなく、実際にここに住んでいるからこそ感じられるものを感じたい。


『central-library』